リモートワーク(3)

皆様こんにちは、株式会社コアブリッジの柳です。
今回もリモートワーク(テレワーク)についての続きです。
前回は、リモートワークに必要な事項として「オンライン会議システム」「機器や通信回線等の設備」「目的」「情報共有の手段」「ルール」を挙げて、前の3つについて書きました。
続けて、残りの「情報共有の手段」「ルール」について記します。

情報共有の手段

これには、適切な手段を選択できる、ということに加えて、トラブルに備える(業務を継続できるようにする)という意味があります。
オンライン会議システム自体が手段だろう、と思われるかもしれませんが、会議システムも手段の一つにすぎず、それで全てをまかなおうとしないほうがよいです。しかも、会議システム自体が障害で使えなくなることが時折あります(実際に当方も何度か遭遇しています)。この時に何もできなくなってしまうのでは、オンラインに移行した意味も半減です。
ファイル共有、個人との会話用のチャットシステム(Chat。SMSやLineのような文字で対話するシステム)、全体周知用の掲示板などが該当し、「会議形態でなくても情報共有や伝達ができる」「会議システムが使えなくなっても代替手段がある」ということを実現するためです。
ITを活用している職場ではすでに該当の環境を持っているでしょうし、そのような投資はしていない所でも、たとえばGoogleの無料のサービスなど何らかの代替手段を用意しておくとよいです。この時に最優先で考えることは、最低限でよいので、他者と「つながっている状態を維持できる」ことです。

この「つながっている状態を維持できる」ことを阻害するのが「システム障害」「停電」です。
「システム障害」は、自前の環境(コンピュータ機器、ネットワーク機器など)自体の不良は自分で対処が必要ですが、サービス自体の障害は復旧を待つしかありません。待つ間は、先述したように代替サービスを利用する、あるいは従前のアナログ方式に戻すことで対処できます。
2016年の3月に、全日本空輸(ANA)の国内線予約システムが模障害を起こし、空港が大混乱に陥ったことがありました。原因はネットワーク機器の不具合だったのですが、復旧するまでの間、手書きの搭乗券を発行して現場を回しました。驚嘆すべきは、それにそなえて用紙が現場に常備され、職員が訓練されていたということです。

ITの最大の弱点が「停電」でしょう。
当方もリモートワークに移行してから、障害(停電以外も含む)発生時にお客様へのサービス提供(※ここではオンラインでの研修のご提供を想定して書きます)をいかに継続させるかで悩みました。「自宅でできる最大限のことを」という方針で、「ポータブル電源の調達」「通信回線を複数本確保」「予備機器の常用(この後述べます)」「代替可能な複数のITサービスを併用」を実行しました。費用は会社持ちにしましたが、意外に安価に実現できています。
可能な限り長時間サービス(業務)を継続させようとすると、バッテリーで長時間動作し、通信機能も備え、PCの代替が(相応に)できること、という機器要件が出てきますが、予備機としてこれに最も適していたのが、当方の場合にはタブレット端末(iPadなどの機器)でした。PCに比べると操作性等や汎用性は落ちますが、障害時にお客様を待たせることなくサービスを持続させることを優先して判断しました。障害時のサービス継続の観点では文字通り”必要最低限”を見極めておくことが重要です。これも「目的にそって、やることとやらないことを決める」という大原則の実践にあてはまります。

ルール

新しい方法を採用したら、それに応じたルールを整備していく必要が出てきますが、大事なのは「やりながら」作っていく・変えていくということで、最初に全て整備することではありません。
自宅での勤務のため、住宅環境、生活音、家族対応、服装など、業務以外の配慮が必要になってきます。その際に「xxをしてはいけない」ということよりも「・・・を許容する」のような寛大なルールを整えるほうが得策です。カメラから生活感が見えてしまう、服装が普段着、家族の声が聞こえたり姿が映ったりしてしまう、などいろいろなことが起きますが、私の感覚ではどれも目くじらをたてるようなことではなく、業務ができればそれでよいという考えです。
ただし、やり方に対しては寛容であっても、業務である以上は実行責任が伴います。リモートワークの普及をきっかけに、何をする責任が課せられるのかを明示し、作業時間や経過手段ではなく結果を確認する、という職責の定義と評価の仕方についてあらためて注目されています。20年以上前に「成果主義」を取り入れた日本の大企業が軒並み失敗した事例がありました。その考察は本コラム外のこととして、ここで申し上げるのは、そこまで大袈裟なことではありません。リモートでの業務にあたり、いつまでに何をやるのかを決める、裁量の範囲を明確にする、業務の途中状況と成果(結果)を確認(評価)する方法を決める、など、挙げてみれば当たり前のことをする必要に迫られた、しかもそれらは多くの組織では普段からうまくできていないこと、ということです。全社での統一が無理でも、各部署(少人数の単位)に閉じた運用は十分可能です。業務形態が変わった今は、試行錯誤も許され、それを整える好機です。

「ありがちな誤解」について記すつもりでしたが、今月もまた字数が尽きてしまいました。
では、また次回お会いしましょう。