AI

皆様こんにちは、株式会社コアブリッジの柳です。
前号では「そろそろDX(Digital Transformation)と思っていたけど、その前に」と、まだ取り上げていなかったクラウドを題材にしましたが、DXには不可欠とも言える『AI(Artificial Intelligence)』についてもまだ触れていませんでした。
「人間のように判断や予測を行う」とか「学習するほどに賢くなる」とは一体どういうことなのか不思議な方も多いでしょう。
なにぶん高度な技術で方法も色々あるため全てを正確に述べるわけにはいきませんが、「AIとか学習ってこんな感じのもの」というイメージをお掴みいただくことを目的に、いつものように思いっきり概容を記していきます。

AIとは

Artificial Intelligence:人工知能(昔は人工頭脳と呼ばれたこともありましたね)には、意外なことに明確な定義がありません。
1956年に米国のJohn McCarthy氏が世界で初めてこの語句を使用したとされ、同氏は、
“It is the science and engineering of making intelligent machines, especially intelligent computer programs.”
(知的な機械、特に知的なコンピュータープログラムを作成する科学や工学のことである)
としています。
漠然としていますが、おおまかに「人間の思考をコンピューターで実現する技術」と言えるでしょう。
人間の思考をコンピューターで実現しようとするためにはいくつか方法がありますが、わかりやすいものに「明確な、数多くの判断条件をコンピューターに提示し、それに従って判断させる」というものがあります。雑誌やネットなどで「○○診断」と名を打ったYes/Noの分岐チャートを見かけますが、あれの大掛かりなものといえばよいでしょうか。この方法は、経験などによる暗黙知を判断条件にするのが難しい、判断条件が増えると矛盾が生じやすくなる、などといった原因により、すぐに限界が来ました(正確には「用途が限定された」というべきで、現在でもこの方法は第一線で使われています)。
このため別のアプローチが必要となり、考え出されたものが「学習」方式です。

コンピューターが自ら学習して徐々に賢くなり判断ができるようになる、という不思議な話ですが、別の言い方をすると、人間が条件を指定するのではなく、コンピュータ自身が「目的にたどり着くための条件を試行錯誤しながら探っていく」という方法です。この「試行錯誤しながら探っていく」が「学習」にあたります。
なんとなくイメージを掴んでいただくために、比較的わかりやすいものを例示します。
※学習の方法も色々とあり、ここに示すのはあくまでイメージを掴むための説明である点はご理解ください

学習方法の一例

人間が学習する方法には「先生に教えてもらう」「経験を積んで法則を導き出す」があります。AIの学習でも「教師あり学習(正解あり)」「教師なし学習(正解は分からないが分類はできる)」があり、人間の場合と全く同じです。ここでは「教師あり学習」を例示します(その中のさらに一つの方法です)。
又聞きした話で恐縮ですが、某「夢の国」を運営している会社では、入場者数の予測を、膨大なデータをもとに行なっているそうで、ちょっとその真似事をしてみましょう。
入場者数を左右するものとして「曜日」「天気」「気温」「競合イベント」があるとしましょう。それらが入場者数に及ぼす程度(重み)はそれぞれ異なります。そこで、
 入場者数予測値 = 曜日に関する情報×曜日の重み
         + 天気に関する情報×天気の重み
         + 気温に関する情報×気温の重み
         + 競合イベントに関する情報×競合イベントの重み
         + 調整のための値
のような数式で表してみます。
「入場者数」「曜日」「天気」「気温」「競合イベント」は過去のデータが山ほどあります。これを「教師データ」としてAIに教えることで、入場者数予測値を導く数式の精度を上げていってもらおう、という寸法です。
問題は「重み」や「調整のための値」をどんな数値にすればよいかです。
これは人間にもコンピュータにもわからないので、とりあえず最初は「適当な値」を設定しておきます。
そのうえで、教師データを使って入場者数の計算をすると、正解のはずの値(実績値)と計算値の間に当然誤差が出ます。100件の教師データを使って計算すれば、100件の誤差が出ます。ならば、この誤差が最小になるように重みの値と統制のための値を試行錯誤でちょっとずつズラしていけば、過去の実績をもとにした式ができあがります。これが学習です。コンピュータは「とりあえず適当な値を割り当てる」「値をずらして試行錯誤する」ということは得意です(おなじみのExcelにも該当の機能としてRAND系の関数やソルバーがあります)。
学習を重ね、調整を行い、入場者数を求める理論ができあがれば、未来の入場者数の予測ができるようになるというわけです。
※重ねてですが、あくまでイメージを掴むための説明である点はご理解ください

学習のためには、良質なデータを集めることが重要になってきます。正確で、欠損がなく、偏っていないデータ群を大量に必要とします。色々な企業が情報を欲しがり、やっきになって収集しているのも頷けますね。

もうちょっと書きたいこともあったのですが、字数が来てしまいました。
今号は以上です。
では、また次回お会いしましょう。

※本文中の情報、状況、数値等は執筆時点のものです