AI(3)
皆様こんにちは、株式会社コアブリッジの柳です。
今回は、AI編の最後として「AIの限界」や「AIは人間に置き換わるのか」について触れていきます。
シンギュラリティ(Singularity)
AIが人間の能力を超える時点あるいは概念のことをシンギュラリティと言い、日本語では「特異点」と訳されます。
米国のレイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)氏による2005年の著書
“The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology(シンギュラリティは近い-人類が生命を超越するとき)”
の中で『シンギュラリティは2045年に到来する』と記され、有名になりました。
著者執筆時の未来予測であり、すでに現実(2010-2020年代)との乖離があることや、機械と人間の融合というSF (Science Fiction) のような話が出てくることもあって、正直この『2045』という数字が一人歩きしている感が強いように私には思えます。
もっとも、天才の著者によれば
「人間の脳のシミュレーションを行うのに必要な計算量の推定値が十億倍違っても到来が21年(百万倍なら15年、一千倍なら8年)遅れるだけ」
なので、私ごとき凡人の評論に何の意味もありませんが…
AIの失敗
有能なAIも、時に人間では考えられないような結果を出すこともあります。
少々古い事例ではありますが、失敗事例の有名どころとして、
- Googleの画像認識で肌の色が濃い人が動物(ゴリラ)に判別された(2015)
- AmazonのAI採用システムで女性の評価が下がる傾向があった(2018)
- Uberの自動運転車がAIが歩行者を認識せず死亡事故が発生した(2018)
があります。
数年前のAIの発展途上における事例で、当然今は進化改良されているはずですが、実際に現在でも、AI導入済みの企業における日常的な業務において「どうしてこんな結果が出たんだ???」と首を傾げたということも頻繁に聞きます。
AIは負の意味でも想像以上のことを行いうるという事実も念頭に使用する必要があります。
AIの限界
AI自体は、
- 人間が設定した問題に対して
- 過去の事象を学習して
- 最適解を機械的に導出する
というものであるため、それらを裏返せば、
- 意志がない
- 自ら目的を設定できない
- 五感による知覚ができない
- 事例が少ないと対応できない
- 人の感情を汲み取れない
- ひらめき(第六感)がない
- 新しいものを想像/創造できない
- 倫理や常識に基づく判断ができない
が短所であり限界と言えます。
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上記短所は
「見かけ上それっぽい動きをすることはできるが、あくまでプログラムされたものであって、人間が行うようにはできない」
という観点で記載しています
※※※
また、AIは「人を動かすことはできない」「責任を取れない」ということを短所として挙げる人もいます。
しばしば話題にあがることとして
- 自動運転でどちらの経路も人身事故を起こす場合にどうするか(トロッコ問題)
- AIの結果が事故を起こした場合の責任は誰にあるか
ということがありますが、これらは最終的に人間が判断し、責任を負うものであり、AIの限界としてしまうのは酷だろうと感じます。
いつだってコンピュータは人の仕事に置き換わってきた
AIの長所短所も踏まえた上で、これまたよくある「AIは人に置き換わるか」について、ここでも触れてみます。
人力からコンピュータに完全に置き換わって久しいものに「電話の交換手(ちょっと古過ぎか..)」「切符の販売や改札」など、また、最近進んでいるものの例として「小売店のレジ(支払い)」「空港のイミグレーション(immigration)」など、さまざまなものが新しい技術により自動化されてきました。
そしてそれは今後も変わりません。正確で高速で疲れを知らないのですから必然です。
今までは、既存の明確なルールに基づいて行う作業がコンピュータ化されてきました。それが、AI(を支える技術)の進化により、多少曖昧なもの(ある程度の判定を行うもの)も置き換え可能になってきたわけです。
該当する仕事をしている人には脅威に映るかもしれませんが、これはコンピュータ(AI)に限った話ではなく、人間の社会でも、競合や新しいサービス、新産業の登場により、競争力の低い人や組織が淘汰されてきたのと変わりはありません。
逆に自動化により浮いた労力を、他の価値のあることに回したことで、新しい価値の創造、事業領域の拡大、ができているのもまた事実です。
詰まるところ、現状にあぐらをかき安穏としていてはいずれ他のものに取って代わられるリスクからは逃れられない、ということですね(自戒)。
AIに置き換わられないために
AI化するには、対象の簡素化やモデル化が必要です。
現状ではAI化できるのは形式知(文字や図などで書き表せる知識)であり、暗黙知(その逆で、人の頭や心の中にあり表記できない知識)をAIに置き換えるのは事実上無理です。
形式知でなく暗黙知を活用して行う仕事はAIに肩代わりはできません。
このため、先述の「判断」やAIの短所・限界を遂行する仕事、換言すると、「AIを作る(AI利用の企画をする、AI自体を作る・保守する)」「AIを利用する(AIを使い生産性を上げたり付加価値をつける)」側に立てば、AIに取って代わられることは当面ないでしょう。
AIは以上です。
では、また次回お会いしましょう。
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