AI(2)
皆様こんにちは、株式会社コアブリッジの柳です。
今回はAI(Artificial Intelligence)の続きで、技術的な説明ではなく、知財や規制について記してみます。
AI関連の知的財産権
AIを使って執筆した小説が賞をとるようにまでなった当世、著作権や所有権の帰属について議論されています。
著作権法によれば、
『著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう』
と規定され、さらに文化庁のWebサイト <https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu.html> には
- 単なるデータが除かれる
- アイデア等は除外する
- 工業製品等は除外する
- 小説、音楽、美術、映画、コンピュータプログラム等が該当する
- 編集著作物として、新聞、雑誌、百科事典等が該当する
と明記されています 。
法律の解釈ゆえAIによる著作物の著作権の帰属を一概に決め打ちにはできませんが、
- 人が主体となり、AIを道具として創作したならば、その創作物の著作権は著作者に帰属する
- AIが主体となり生成されたものは、著作物には当たらず、著作権は発生しない
という見解が大勢を占めています。
同時に、「そのAIを開発した開発者の権利は保護するべき」という見解も共通的です。
内閣に設置された「知的財産戦略本部」にて「知的財産推進計画2021 <https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku20210713.pdf> 」が策定され、AIに関しても記載がありますが、そこでは、2019年12月に経済産業省から発表された「AI・データの利用に関する契約ガイドライン 1.1版 <https://www.meti.go.jp/press/2019/12/20191209001/20191209001-1.pdf> 」が参照先として記されています。
同ガイドラインの著作権に関する部分には
- 既存の法(著作権法、民法)で定まっているものは、それをデフォルト(初期設定)としたうえで、利用条件を契約できめ細やかに設定せよ(※公序良俗に反しない限り、法の定めよりも契約が優先されます)
- 定まっていないものは、利用条件をきめ細やかに契約で設定せよ
とあり、詰まるところ、現行の法には定めはないため、契約で運用せよ、ということになります。
AIの場合には、AI自体(アルゴリズムやそれを実装したプログラム)に加えて学習用のデータも保護の対象になり、契約の際のポイントとして
- 利用目的
- 利用期間
- 利用態様
- 第三者への利用許諾・譲渡の可否・範囲
- 利益配分
が具体的に列挙されています。
AIの法規制
新たな技術や産業等の登場に伴い法や倫理の整備は不可欠です。
例えば、自動車、遺伝子組み換え、インターネットなども、その普及とともに法律や規制、ガイドラインが作られてきました。
AIに関しても「どこまでAIを使ってよいか」等の枠組みが必要ですが、急激な進歩に追いついていないのが現状です。
AI分野における法規制は欧州(EU)が世界で最も先行しています。
2021年4月に、欧州AI規制法案(EU AI Act) <https://artificialintelligenceact.eu/the-act/> が公表され、2024年の施行予定に向けて整備が進められています。
さすがに英語で法案を読むのは辛いですが、幸い要約 <https://www.ceps.eu/wp-content/uploads/2021/04/AI-Presentation-CEPS-Webinar-L.-Sioli-23.4.21.pdf?> も公開されており 、その文書に目を通してみると、AIの規制として、リスクの程度に応じて4段階設けていることがわかります。
- 受容不可のリスク(例:社会的評価に使用):禁止
- 高リスク(例:雇用、医療機器) :要件と事前の適合性査定を条件に許可
- 透明性義務を有するAI(例:擬人化) :情報や透明性の義務を条件に許可
- 最小限のリスクまたはリスクなし :制約無しに許可
※上記EU法案の概要は、それを引用した経産省の日本語文書 <https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/pdf/2021_001_05_00.pdf> がわかりやすいです。
法案公開後、企業や団体などからの反応はさまざまですが、成立し施行されれば、世界初のAI関連法規となり、世界各国がこれを参考に法整備が進んでいくでしょう。
今号は以上です。
では、また次回お会いしましょう。
※本文中の情報、状況、数値等は執筆時点のものです