DX(2)

皆様こんにちは、株式会社コアブリッジの柳です。
今号はDX(Digital Transformation)の続きです。

前回の最後に「DXの取組みへの考慮事項を次回述べる」と書きましたが、つい先日、その根拠となりうるDXの取組みに関する調査結果が独立行政法人情報処理推進機構IPAから公開されましたので、今回はその調査結果を引用して、現在の日本のDXの傾向値からどのようなことが読み取れるかを記します(考慮事項等への当方の見解は次号で述べます)。

日米比較のDX取組み状況の調査

IPAが公開したのは、DXの取組み状況に関する調査結果を分析した『DX白書2023』https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/dx-2023.htmlです。
米国と日本を比較した棒グラフに加え、ITについて少し突っ込んだ解説も掲載し、総ページ数377と充実しています。
この白書は、限られた企業や組織へのインタビューおよびアンケート結果であることを前提に読む必要はありますが、数字とともに傾向を把握するのに有用です。
なおかつ、他国(米国)との比較ができるのも大きな利点で、これもまた、日米で回答の仕方の違い(楽観的・悲観的、厳しい・あまい、など)がおそらくあることを差し引く必要はあるでしょうが、具体的な数値となって差が見えるのは大変ありがたいです。
「米国が理想で、日本は劣る」と決めつけるつもりはさらさらありませんが、なにやかやでITを牽引する国と相対的に遅れている国の比較結果は、日ごろから感じている実状とも合致しています。
以下、興味深いものを選択して記します(調査結果には2021年と2022年の数字が載っていますが、最新の2022年のものを記します)。

調査結果

●DXの取組み内容と成果(P.14)
 デジタル化によりすでに成果が出ている・・・・・・・・・・日本76.1%、米国86.2%
 業務効率化による生産性向上で成果が出ている・・・・・・・日本78.4%、米国79.1%
 新規製品・サービスの創出で効果が出ている・・・・・・・・日本24.8、米国66.8%
 顧客視点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革で成果が出ている
                     ・・・・・・・・日本21.5、米国71.3%

●DXに取組んでいないと回答した企業に対して、今後のDX取り組み予定(P.87)
 取り組む予定がない・・・日本38.0%、米国78.0%
 不明・・・・・・・・・・日本48.1%、米国12.2%

●人に関する調査結果
 ITに見識がある役員が三割未満(P.16) ・・・・・・・・日本72.2%、米国39.1%
 DX推進人材の量の確保ができている(P.21、158)・・・日本10.9%、米国73.4%
 DX推進人材の質の確保ができている(P.22、160)・・・日本 6.1%、米国50.8%

●組織に関する調査結果
 経営者・IT部門・業務部門が協調できている(P.17) ・・・・日本37.1%、米国80.1%
 DXの推進をミッションとする専門部署がある(P.114)・・・日本72.9%、米国93.0%

●DX推進のための予算確保状況(P.116)
 継続確保している・・・・日本23.8%、米国40.4%
 都度申請し承認する・・・日本45.1%、米国36.0%

●DXの成果や評価に関する調査結果
 DXの取り組みの成果(P.88)
  成果が出ている・・・・・・・・・・・・・・・・・・日本58.0%、米国89.0%
  出ていない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・日本24.7%、米国6.6%
 Digitalizationにより既存製品やサービスの高付加価値化で成果が出ている(P.107)
        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・日本69.3%、米国93.6
 業務製造プロセスのデジタル化で成果が出ている(P.107)
        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・日本83.0%、米国87.7%
 顧客への価値提供の成果測定をしていない(P.18)・・・日本36〜65%、米国11〜17%
  (※業種や部門別等分割して数字をが掲載されているものは数字の幅を記します)

●Agileの原則とアプローチを取り入れている割合(部門別)(P.109)
        ・・・・・・・・・・・・・・・・日本28.5〜49.0%、米国65.9〜78.8%

●DX推進のための企業文化や風土(P.25)
 リスクを取りチャレンジすることが尊重される・・・日本15.0%、米国42.5%
 高スキルを持っていることが報酬に反映される・・・日本10.9%、米国41.2%

調査結果から読み取れること

これらの数字から、日本のDXにはおおよそ以下の傾向が見られます(※あえて言い切った表現をしております)。

  • デジタル化やIT化による生産性向上はできている
  • DXで何をやればよいのかわからず態度を決められない
  • 権限を持つ上層部にITの素養がある人が少ない
  • 危機感は持っているが戦略的とはいえず場当たり的な対応がみられる
  • DX人材を外に求めるよりも社員を育成している
  • DXやIT化を推進しても価値創出や顧客貢献等の評価や効果測定を行っていない
  • 新製品やサービスの創出に活かされていない
  • アジャイル(Agile)的なアプローチができていない
  • リスクをとってチャレンジしても評価されない

調査結果から読み取れた傾向を明文化してみましたが、想像から外れていないのではないでしょうか。
上に列挙した調査結果から読み取れる日本の傾向をもとに、次号(DX最終回)で当方の見解を述べます。

今号は以上です。
では、また次回お会いしましょう。

※本文中の情報、状況、数値等は執筆時点のものです