クラウド、XaaS

皆様こんにちは、株式会社コアブリッジの柳です。
時節柄新入社員研修向けのテキストを書いていて、その時にふと「そういえばコラムで”クラウド(Cloud)”について取り上げていなかったな」と気づきました。
そろそろDX(Digital Transformation)について書こうかと思っていた所、その際にクラウドやクラウド上のサービスの”XaaS(Xxx as a Service)”が出てくるはずで、今更の感は否めませんが、DXの前にクラウドについて触れておきます。
クラウドの利用は、システム面での利点のみならず、後述するように会計・税務上の効果もあります。

クラウド(Cloud)

クラウドという言葉を最初に使ったのは、1997年に米国のどこぞの大学教授とか、2006年にGoogleの当時のCEOとか言われていますが、コンピューターネットワーク(Computer Network)を雲の形で図示することはかなり昔(1980年頃)からやられていました。
我が国の総務省は
「クラウドとは、『クラウドコンピューティング(Cloud Computing)』を略した呼び方で、データやアプリケーション等のコンピューター資源をネットワーク経由で利用する仕組みのことである」
と説明しています。
他にも、経済産業省、国際標準化機構ISO、それを和訳したJIS規格など、いろいろなところで定義がなされていますが、米国国立標準技術研究所NISTの定義が有名で、

  1. On-demand self-service(必要時に必要な分を自分で)
  2. Broad network access(標準的な通信方式で様々な機器から利用可能)
  3. Resource pooling(コンピュータ資源は複数の利用者で共用される)
  4. Rapid elasticity(迅速に拡張・縮退できる)
  5. Measured Service(サービスの提供状況が可視化され公開されている)

の5つの特徴を持つ、としています。
いずれにしても、自分の目の前にあるコンピュータではなく、インターネット上のコンピュータやそれ上で提供されるサービスを、クラウド業者から必要時に必要なだけ借りて利用する、ことを指します。
最近のコンピュータは性能や資源があり余っているので、一台が持つ演算能力や記憶装置などを独り占めせずに他の利用者と共用して使用し、結果的に商用サービスは安価に設定されています。
昨今の有名なIT系サービスのほとんどはクラウド上で提供されていると言ってしまってもよいでしょう。
以下、クラウドとクラウド・コンピューティングは特に区別なくクラウドと記していきます。

クラウド上のサービス

先述のNISTでは、3種類のサービスが定義されています。

  • IaaS(アイアースと発音。Infrastructure as s Serviceの略):ハードウェアやネットワーク機器などを貸してくれる
  • PaaS(パースと発音。Platform as a Serviceの略):IaaSに加えて、LinuxやWindowsなどのOSやデータベース(Database)までを貸してくれる
  • SaaS(サースと発音。Software as a Serviceの略):PaaSの上で動くソフトウェアサービスまでを貸してくれる

これらをあわせてXaaSと記します(ザースと発音)。
SaaSは、例えば、GoogleのGmailとかMapとか、ブラウザ経由で使えるソフトウェアサービス(アプリケーション)を使わせてくれるサービスのことで、一番馴染みがあるでしょう。
PaaSはアプリケーション(ソフトウェア)が動作する土台の環境(まで)を借りるもので、それ上で動くサービスは自前で用意します。
私の仕事柄、クラウドの実際の利用方法をデモンストレーションをする時があるのですが、クラウド事業者の管理画面にログインして、PaaS環境を借りて初期設定し、超簡単なアプリケーションを作成して動作させる、というところまでを、30分程度で実演します。
IaaSはハードウェアやネットワーク機器など(まで)を借りて、システム構成を自由に構築できる環境です。
PaaSとIaaSは、利用者ではなくシステム会社向けの環境です。
システムの開発や構築をするのでなければSaaSの利用を考えればOKです。
自分たちが所属している組織向けにシステムを構築するのは、細部にわたる対応が可能で理想的ですが、なにぶん、時間と費用がかかるうえ、品質の確保に相当な努力が必要です。この点、SaaSによる汎用的なサービスを使うと、自分たちの利用の仕方をサービスに合わせる必要はありますが、時間と費用を抑えつつ一定線の品質を確保しやすくなります。

クラウドの効果

これは、システム会社向けの会計や税務の話になりますが、クラウドを利用することで従来の固定資産を変動費に変えることが可能になります。
自前でコンピュータ機器を購入すると、通常は固定資産として処理することになります。4年間にわたる減価償却や、そもそもそれ以前の購入のための予算承認や、実際の調達などが面倒なうえ、時間がかかります。
一方で、クラウドを利用すると、使用した分の利用額を払うだけとなり、変動費で処理ができます。また、機器の増設や削減も自在にでき、繁忙期だけ機材を増やし、閑散期は減らす、というのも容易です。
機材類を設置する場所や冷却のための空調も不要というのも大きな利点です。

クラウドの短所

AmazonやGoogleなどのクラウド事業者からコンピュータ資源を”借りる”ため、自分たちで自由に使える(システム構成を変える、など)のは事業者が貸してくれている範囲内のことに限定されます。
また、インターネット上のサービスを利用する以上、セキュリティ面の考慮は常に必要です。
クラウド事業者自体でシステムトラブルがあると自分たちのシステムも影響を受けます(これはたまに起きていて大きく報道されていますね)。
このため、高度なシステム構成をとったりセキュリティや可用性(稼働の維持)を厳重に確保する場合には、クラウドは使わずに自前で環境を用意する(オンプレミス:On-premiseと言います)ことも多く、また、他者と共有せずに占有するプライベートクラウド(private cloud)を使うこともあります。

ITの利用が避けられない今日、何らかの形でクラウドを必ず利用します。
その長所と短所をわきまえたうえでサービスを選択するのが賢い利用法です。

今号は以上です。
では、また次回お会いしましょう。

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