アジャイル(3)

皆様こんにちは、株式会社コアブリッジの柳です。
前号まで、アジャイル(Agile)とは何かに加えてプロジェクト(Project)について述べてきました。
今回は、アジャイルの考え方に基づいた作業の進め方について記してみます。

おさらい

前号までの要点をあらためて記すと、

  • アジャイルとは「変化に適応し、価値を提供し続ける」という思想である
  • プロジェクトとは「独自のプロダクト(Product)、サービス(Service)、所産(Result)を創造するために実施される有期的な業務」

です。
第一項の通り、アジャイルとは考え方であり、方法論ではないのですが、ソフトウェア(Software)開発に適用されて、色々なプロセス(Process)や経験則が得られています。
第二項は、特定の目的を達成するために期間を区切って活動する、と捉えることもできます。
この二つを基にして述べていきます。

アジャイル的な活動

アジャイル的なソフトウェア開発で一般に行われている活動は、おおよそ以下の通りです。

  1. 「全体としてやること一覧」を作成し、優先度の高い順に並べる
  2. 作業の反復期間を決める(一般的には1-4週間で、2週間が割と多い)
  3. 「全体としてやること一覧」から、今回の反復作業でやることを選択して、「今回やること一覧」を作成する(粒度はもう1段階細分化する。各作業を付箋紙に書いて壁に貼る。壁に「作業予定」「作業中」「完了」「困っている」の枠を作り、付箋紙を「作業予定」に移動する)
  4. 今回の作業の開始時に、作業の見通しを立てる(作業分担をしたり、何をもって作業完了とみなすかを決める)
  5. 作業を実施し作業状況を可視化する(該当作業の付箋紙を「作業中」の枠に移動する。終わったら「完了」に、他者の助力が必要ならば「困っている」に移動する)
  6. 毎日、決まった時間に、15分間のミーティング(Meeting)を行う(ミーティング時間を延長しない)
  7. 週次で「全体としてやること一覧」を更新する(漠然と記したことを具体化したり、優先順位を変えたり、やることを増減したり変更したりする)
  8. 作業が終わったら第三者に見せてフィードバック(Feedback)をもらう(合格が出ることもあれば、修正や追加作業を依頼されることもある。「全体としてやること一覧」を更新する)
  9. 反復期間が満了したら、作業の完了/未完了を問わず、今回の作業の振り返りを行う(できたこと、できなかったこと(次回への申し送り事項)を明確にする。「全体としてやること」一覧を更新する)。

まず最初に1と2を行い、以降は3から9までのことを繰り返して(反復して)いきます。
2の期間は、週単位でなくても、極端な場合1日間でも構いません。
6の日次ミーティングは、一人作業の場合、現状の把握と今日一日何をするかを決める、でよいです。
9の振り返りが重要で、「反復すること=次に活かして変化に対応していくこと」の肝になります。

見積もりについて

作業にかかる時間、お金、人や物(資源)など、仕事では必ず見積もりが発生します。日々管理対象とするもののうち最も多いのは時間(スケジュール)でしょうか。
どの項目にしても、「未経験なことに対する正確な見積もりは不可能」です。予定(見積もり)と実績に差異が生じた時に「なんでこんなことになっているんだ、見積もりをもっと正確にしろ!」と叱責しても/されても、それは無理なことで、それを無理と認めて、どう対処していくかに考えを切り替える必要があります。
とはいえ、可能な範囲でも精度は上げたいものですし、類似の経験がある作業であれば相応の見積もりは可能です。このような場合には、絶対的な見積もり(例:この作業は二人で2.5日間かかる)は難しくても、相対的な見積もり(例:あの時の作業Aを基にして、1.5倍くらいかかりそうだ)ならば比較的容易です。

大事なこと1

「全体としてやること一覧」は随時更新されますし、更新していきます。新しい作業項目を追加したり、優先順位を変更することは往々にして発生しますが、その際に、新しく入れたものがあればその分元の作業から落とす必要があります。筋論からしたら当たり前のことですが、「いや、元の作業はそのままやってもらわなければ困る」と無理強いする/されることは残念ながら少なくないでしょう。作業の許容量は大きく変わりませんし、一時的に残業や休出等で増やすことはできても継続はできず、あきらかに質が下がります。

大事なこと2

業務や作業に際しては、顧客、委託先、上司、部下、同僚、など必ず他者(相手)がいます。依頼、説明、指示、合意などを行って仕事は進んでいきますが、これを適時かつ定常的に行うことが必須です。理想は対面で行うことですが、電話やチャット(Chat)による双方向コミュニケーション(Communication)でもOKです。要は、書類による時間のかかる方法よりも対話により合意をして先に進めていく、ということです。もちろん、形として(証左として)残り後で見返すことができる書類には意味があり必要なものですが、それに形式的にこだわって時宜を逸しては本末転倒です。

アジャイルは、「アジャイル(2)」の回で述べたように、長所ばかりでなく短所もあり、万能な方法ではありません。しかし、現状の作業の仕方になんらかの問題を抱えている場合には、別の方法として試してみる価値はあります。「変化に対応する」ことはいつの世にも必須で、それを実現するには何はともあれ実行することです。従来の方法を変えるのには勇気がいりますが、なにも100%変えることはなく、10%でも5%でもいいのです、できることから始めていく、くらいの気持ちで取り入れてみてはいかがでしょうか。

今号は以上です。
では、また次回お会いしましょう。

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