アジャイル(3)の前にプロジェクト

皆様こんにちは、株式会社コアブリッジの柳です。
前回まで、”アジャイル(Agile)”の考え方に基づくシステム開発について述べてきました。
「アジャイル方式で日々の業務を実行するにはどうするか」について書くつもりでいたのですが、そのためには”プロジェクト(Project)”について触れておくとわかりやすくなります。
そこで、今回は”プロジェクト”について取り上げます。
プロジェクトは、プロジェクトの進め方=プロジェクト管理の仕方=プロジェクトマネジメント(Project Management)と切っても切れない関係にあるため、ここではプロジェクトマネジメントについても触れておきます。

プロジェクトマネジメントの世界標準

プロジェクトの管理の仕方に正解はありませんが、自己流で行なっていると不安になってくるもので、何か”拠り所”を求めたくなってくるのが人情です。
1960年代後半以降、世界的にその必要性が声高に叫ばれるようになり、一冊のガイド本が世に出されました。米国のプロジェクトマネジメント協会(PMI(R):Project Management Institute)が策定した”PMBOK(R)ガイド”と呼ばれる書籍で、今日ではプロジェクトマネジメントに関する事実上の世界標準とされます。PMBOKは”Project Management Body of Knowledge”の略で、”プロジェクトマネジメント知識体系”と訳されます(※(R)は登録商標の記号です)。1987年にホワイト・ペーパー(White paper。日本語だと”白書”)として発行された後、1996年に正式に初版が刊行されました。現在(2021年12月時点)の最新版は、2021年7月(日本語版は同年10月)に公開された第7版です。前版の第6版から完全刷新されて衝撃的だったのですが、これもアジャイル(Agile)形式のプロジェクトに対応する(=従来型からの変化が必須という)背景があります。

プロジェクトとは

PMBOKガイドでは、プロジェクトを
「独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期的な業務」
と定義しています。”所産”とは耳慣れない言葉かもしれませんが、英語では”result”、つまり「結果」のことです。
この定義をもう少し平たく書けば、「プロジェクトとは、目的の成果を得るために期限を切って行う活動のこと」となります。
一般に、モノやサービスなどの新規開発が該当し、工場での生産やサービスの提供など継続的に繰り返す活動(定常業務と呼びます)とは区別しています。
一回こっきりの活動と、繰り返し行われる活動では、「前回と同じ」というのが効きにくいため、より考慮事項が多い、というわけです。

今日では大半の業務がプロジェクト?

システム開発はプロジェクト(Project)方式で行われているというのはいいでしょう。
では、上記プロジェクトの定義に合致しない”定常業務”についてはどうでしょうか。今日日(きょうび)の業務において、たとえ繰り返し行う活動であったとしても、「期限を決めて」「都度目的/目標を定め」「それを達成するように動く」ということは多く、それはプロジェクトと見なせます。
正直、先述のプロジェクトと定常業務の区別は、説明のためには有用ですが、実務においては大した意味はありません、我々実務家にとっては実益が得られればそれで十分です。
定常業務であってもプロジェクトとみなせるということは、PMBOKガイドに書かれていることは、そのまま業務を遂行する時に当てはめることができます。まぁ、現実的には「この部分は良さそうだな」というものがあれば実際に取り入れてみるというのが実際的で、「PMBOKガイドを頭から最後まで読んで業務に適用するぞ」とまで考えるとかなり大変です…

プロジェクト方式を業務に取り入れてみる

前号で書いたAgileの本質は「変化に適応しながら小さな価値を継続的に提供し続ける」ということで、これは今日の業務においても必要不可欠なことです。そして、Agileを実務に適用しようとするならば、プロジェクト様式で遂行するのが実際的です。前述のように、定常業務であってもプロジェクトのように仕事を扱うことができ、Agileを取り込む余地もあるわけです。
特に、これまでとは違った新しいことを手がけるとか、試行錯誤が必要、といった場合にはこの取り組み方は有効です(もちろん、従来の方式で何ら困っていない、別の方法に変えたらそのほうが混乱する、という場合には、無理に変更する必要はありません)。
Agileは「短い反復」を繰り返し行うことが作業の土台になっています。Agile的な活動では、各反復の「開始時」「毎日」「週次」「成果物完成時」「反復終了時」に何を行うとよいか、というのがおおよそ決まっています。この観点や具体的に何を行うかを知って、現状の業務に取り入れてみると、きっとなにがしかの変化が起きるでしょう。
Agileな活動ではどんなことを行うか、どんな留意事項があるかは、次号で記します。

今号は以上です。
では、また次回お会いしましょう。

※本文中の情報、状況、数値等は執筆時点のものです
※PMBOK、PMI、PMPは、プロジェクトマネジメント協会(Project Management Institute, Inc.)の登録商標です。