2014.08号 ベトナム編(3)

皆様こんにちは、株式会社コアブリッジの柳です。今号はベトナム編の最終回です。

入出国時の注意

他国を訪問する時には、ビザの有無や入出国時の手続きなどに気を使うものですね。
ベトナムは、日本人の場合、15日以内の滞在であれば、ビジネス/観光ともにビザは不要です。
ただし、入国審査時に、パスポートとともに出国用の航空チケットの類いを提示する必要があります。
初めてベトナムに渡航した時に、ベトナム入りの前日にインターネットでチェックインを済ませてからeチケットを印刷しようとしたところ、前泊地のホテルのビジネスコーナーが閉まっていて印刷できませんでした。
幸いチケット購入時にメールで送られてくる旅程表を印刷して持参していたので、それを提示することで入国できました。
「印刷したものを所持していなかったために係員に別室に連れて行かれた」とか聞いたことがあったので、イミグレーションでは少し緊張しました…
なお、空港利用税は、空港での支払は不要です(航空チケット代に含まれています)。

タンソンニャット国際空港。ホーチミンシティの”玄関”。
国際線の新ターミナルは、日本のODAにより作られました。

謙虚なアジア人

ベトナム滞在中に興味深いことが2度ありました。

一つは、夕食のレストランでの話です。
店(別段高級な店ではありません)に入りテーブルに着くと、箸やスプーンなどの一式とおしぼり(よくあるビニールに入った使い捨ての薄いものです)を持ってきてくれるのですが、その時はおしぼりがありませんでした。注文してしばらく待っても出てこないので、店員に
“Can I have a paper towel?”(おしぼりもらえる?)
と頼みました。
英語が分かる方だったようで、「おっとうっかり!」という素振りを見せながらすぐに持ってきてくれました。その際に「I’m sorry…」と言っておしぼりを渡してきたのです。
自分の手落ちを素直に認めてきちんと謝るとは思ってもいませんでした。日本ではごく当たり前の事ですが、他所の国ではそう多くはない事です。

もう一つはタクシーでのことです。
空港に向かうのに、少し早めの時間にホテルからタクシーに乗りました。よくあることですが、メーターを作動させません。
“Would you please use a meter?”(メーターを使ってもらえますか?)
と丁寧に頼みました。するとドライバーは、何やら返答したいのだけれど英語で何と言うかが分からないようで口ごもっています。察するに、料金はメーターではなく交渉した値段にしてくれ、というおなじみのアレですね。明確な返答がないので、再度”Use a meter, please.”と頼むも、状況は変わりません。ここは毅然とした態度を取るべき所です、”Use a meter!!”と強い口調で伝えると、”Yes, sir!”と即答し、背筋を伸ばし、メーターを動かして運転し始めました。
他の国では、「家族を養うのが大変でさぁ〜」とか「日本人なんだろ?いいじゃないか!」とかのたまわって粘ってくるのが大抵なのですが、この時は全く異なり、ちょっと拍子抜けしてしまいました。降りる時には、帰国時ということもあり、少しばかりチップは多目にしておきましたが…

おなじみのサイゴン大聖堂。ちょっと切れてしまっていますが、下に写っている白い車はVINASUNタクシー。
MAILINHタクシーとともに、比較的安心と言われています。
ちなみに私が利用したのはSAIGONタクシーでしたが、問題はありませんでした。

たまたまそれらの2人が極端な例だっただけかもしれませんが、ベトナムの人は真面目で謙虚さも持っていて、日本人とは比較的合いやすいのだろうなという印象を持ちました。もっとも、プライドが高いというのは、他国とも共通したことではありますけどね。

日本との関係

日本はベトナムに対しての最大の援助国です。ベトナムへの援助全体のうちの4割が日本からで、また、日本の他国援助の15%強が対ベトナムです。
政府開発援助ODA(Official Development Assistance)の額を調べると、2012年度の金額で、以下のような実績になっています。
※数字はOECDの統計データのものを記載。単位は100万米ドル。以下同。

対ベトナムへのODA額(上位5カ国)
1. 日本 1646.71
2. 韓国 200.32
3. 豪州 144.50
4. フランス 135.34
5. ドイツ 98.55
全体(上記以外含む) 4115.78
日本のASEAN諸国への援助(上位5カ国)
1. ベトナム 1646.71
2. カンボジア 182.44
3. モンゴル 110.65
4. ラオス 88.43
5. 東ティモール 18.84
全体(ASEAN以外含む) 10604.50

なお、ODAを分類すると

ODA 多国間援助(国際機関を通じた支援)
二国間援助(日本が直接支援) 貸与(円借款。要返済)
贈与(返済不要) 無償資金協力
技術協力

のようになり、2012年度の、日本の対ベトナムの二国間援助の内訳は、

貸与(円借款) 1478.05
無償資金協力 20.38
技術協力 148.27
合計 1646.71

です。

大半は円借款(返済が必要)で、金利は0.01〜1.4%です。これを資金として、高速道路、空港、鉄道、発電所などのインフラが整備されています。
※金利はJICAおよび外務省の発表資料による。

ベトナム料理

ODAの数字を並べても退屈ですので(すみません…)、最後は食事で締めくくりましょう。
主食は米で、米麺や粥もよく食べます。
味の特徴は、南北に長い国のため地域によって差はありますが、辛味、酸味、甘味などがほどよく混ざって、日本人にも合う味、と言えばいいでしょうか。タイ料理のように極端に辛いということもなく、出てくる料理は素材を活かした薄味のものも多く、好みに合わせてタレや香菜などを加えて、場合によってはスープをかけて食べます。
日本でも、米麺のフォー(PHO)や春巻きは有名ですね。先述のように、それ自体に濃い味がついているわけではなく、フォーには付け合わせの香菜やライムを入れて、春巻きにはタレをつけて食します。

フォー・ガー(鶏肉のフォー)。
そのまま食べても十分美味しいですが、ライムを絞って酸味を加え、
香菜を入れて香り付けすると一層味わい深くなります。

フエ料理(※フエはベトナム中部の都市で、19〜20世紀の阮朝時代の都)のレストランでは、コムヘン(Com Hen)というベトナム版猫飯(?!)を食べました。ご飯の上にシジミの実や野菜、ピーナッツを砕いたものがのっていて、そのまま食べてもよいのですが、一緒に出てくるシジミのスープをかけて食べます。一粒で二度美味しい、というヤツですね。さすがに音を立ててすするのは避けましたが、日本を出て汁掛け飯を食べるというのは、何とも新鮮でした。

そして、ベトナムといえば、ベトナムコーヒー。フランス統治時に生産していたものの一つですが、現在コーヒー豆の生産量はブラジルについで世界第二位です(ちなみに、第三位はインドネシアです。アジアの国が上位に入っているのですね※)。
豆の種類や焙煎の仕方で味は変わりますが、深煎りで苦みが強く、濃い目に淹れ、コンデンスミルクを加えて(というか、コンデンスミルクにコーヒーを注いで、といったほうが正しいか)飲みます。これが実に私の好みに合っていてやみつきになり、それまではあまりコーヒーは飲まなかったのですが、以来常飲するほどになりました。
※コーヒー生産量は、国際コーヒー機関ICO(International Coffee Organization)の2013年時点の統計データによる

おわりに

チャイナプラス1の最右翼という人も多いベトナム。ベトナム戦争後にも紆余曲折ありながら今の躍進に至っています。広島、カンボジアなども同様ですが、凄惨な戦争や内乱を乗り越えた土地に実際に赴き、発展している様子を目の当たりにすると、「よくぞここまで」という感慨が湧きます。ちょうど日本も終戦の時期です。あらためて、平和のありがたさや、自分たちが何をすべきかを考えさせられます。

これでベトナム編はひとまず終了です。次回はインドネシア編を予定しています。では、次号でまたお会いしましょう。

※本文中の数値やURL等は執筆当時のものです