2019.06号 タイ特別編(2)

皆様こんにちは、株式会社コアブリッジの柳です。
前回に引き続き、タイの特別編をお届けします。
この5月には、69年ぶりとなる新国王の戴冠式が行われ、一連の儀式が終わった後に、3月末の総選挙の結果が発表されています。
今号では、新国王の戴冠式について書いていきます。

タイの戴冠式

「即位式」と「戴冠式」は同じ(同時に行う)と思いがちですが、タイでは即位から間を空けて戴冠式を挙行することが大抵です。プーミポン前国王は即位後4年経ってからの戴冠でした。
戴冠式直前(3日前!)に、「新国王が4度目の結婚をした」と発表され、驚きが広がりました。元々事実婚状態で、戴冠式には王妃も関与するということもあるのでしょうが、唐突感は否めませんでした。

街の様子

タイの副首相が「新国王戴冠に祝意を示すため国民は4〜7月の四ヶ月間黄色い服を着ること」を推奨しました。
何度かお伝えしていますが、タイには曜日ごとに色が決められていて、新国王の誕生日は月曜日(プーミポン前国王と同じ)で、シンボル・カラーは黄色です。
そのため、黄色いシャツを着た人をよく見かけ、店でも黄色い服や身の周り品の特設売り場が設けられたりしています。

百貨店の"Yellow Item"売り場

建物の柵には金と白の横断幕が掲げられ、お祝いの言葉を記入する記帳台が置かれ、花壇には黄色い花が植えられています。
どこかで見覚えが…そう、この光景は、慶事と弔事の正反対ではありますが、2年前の前国王崩御時および1年前の葬儀時に見たものと同じです。
前国王と誕生日カラーが同じだったという偶然は、合理的なタイ人には準備等の面で幸いだったのではないか、と考えてしまうのは、うがって見過ぎでしょうか…

戴冠式

戴冠式は事前に入念な準備とリハーサルがなされ、奇しくも日本のゴールデン・ウィークと重なる、4/28(日)〜5/6(月)に戴冠式モードに移りました。普段は観光客で賑わう王宮や寺院は休館になり、王宮周辺には交通規制が敷かれました。
戴冠式自体は5/4(土)から3日間かけて挙行され、最終日5/6(月)は臨時祝日となりました。5日と6日は公共交通機関は無料でした。
戴冠の儀式自体は王宮や周辺の寺院で行われるため直接見ることはできませんが、テレビ中継されていました。百貨店や公共施設などには大型のテレビやスクリーンと椅子が設置され、儀式の様子を流しています。

大型百貨店の特設モニタで放映されていた戴冠式の様子。国王が頭上に戴くのが重さ7.3kgの黄金の冠。

二日目の17:00から21:00にかけて街頭パレードが実施され、金色の玉座の置かれた神輿に乗って、伝統的な金色の衣装を身にまとった新国王が国民に姿を見せました。連日昼間は38度の酷暑で、パレードの日は夜になっても32度と厳しい暑さでしたが、沿道には多くの人が待機して新国王が通るのを待っていました。
タイでは憲法により国民の信仰(宗教)の自由が保障されていますが、国王は仏教徒であることが定められています。
戴冠式も仏教の影響が色濃く、寺院に入って儀礼を行ったり僧侶とやりとりする様子がしばしば映されていました。

パレードにて、金色の玉座に座り移動する国王
同じく市中を行進する隊列(※共にTV中継を撮影したものです)

国王の交代

戴冠式の期間に現地であらためて感じたことは、前国王が偉大でいかに愛されていたのか、ということでした。
タイには皇室に対する不敬罪が存在するのであまり口にはできませんが、タイの知人は「前の国王は大好きだった、今の国王は嫌い」と私に話し、戴冠式に興味はないと言い放っていました。奇行が多いと伝わる新国王に対する偽らざる感情なのでしょう。
街に黄色い服が目立ち、パレードの沿道には見物人が待機していたと書きましたが、正直なところ、それほどの高揚は感じられませんでした。同様に、記帳台でお祝いを書いている人は見かけず、百貨店のモニター前に集まる人も少し関心があるニュースとして見ているにすぎないように感じられました。
前国王も最初から人気があったわけではなく、それこそ文字通り一歩一歩国中を自分の足で周り信頼を築き上げたきた結果、絶大な信頼と敬愛につながったわけです。
新国王のこれまでの不評を打ち消してプラスにするには先は長いでしょうが、王室や国そのものがマイナス方向に進むことがないよう切に祈ります。
日本でも同じように天皇が交代しました。日本の皇室の"品の良さ"も手伝って、新天皇に否定的な声は聞こえず、期待が寄せられています。平成天皇がそうであったように、令和天皇もこれからの日一日の振る舞いと言動を積み重ねて行くことで国民から尊敬を勝ち得ていくことでしょう。これは国や時代を問わず、普遍的なことと言っていいのでしょう。

タイの戴冠式に伴う行事は、今年10月にチャオプラヤ川で行われる御座船による水上パレードで締めくくられます。

今号は以上で終了です。
ではまた次回お会いしましょう。

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